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就労継続支援「A型」と「B型」のちがいは?

よくご存じのように、障害福祉サービスの「就労継続支援事業」には、「A型(雇用型)」と「B型(非雇用型)」があり、一般社団法人ディーセントワールドが経営するスワン町田1号店・2号店で実施しているのは、就労継続支援事業A型です。

 

就労継続支援事業の根拠となる法律は、「障害者総合支援法」(平成24年に「障害者自立支援法」から名称変更。正式な名称は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」といいます)という法律ですが、実は、この法律自体には、「A型」と「B型」の違いは記されていません。ただ、「就労継続支援」とあるだけです。

 

実際の法律の条文を見ると、「障害者総合支援法」の第5条の第1項では、次のように、まず「障害福祉サービス」の種類を列挙し、その中の1つに「就労継続支援」があります。

 

5条第1項 この法律において「障害福祉サービス」とは、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、療養介護、生活介護、短期入所、重度障害者等包括支援、施設入所支援、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援及び共同生活援助をいい、(後略)

 

 第1項で列挙した事業について、第2項以降で、1つずつその内容を説明しています。「就労継続支援」については、第14項に記されています。

 

5条第14項 この法律において「就労継続支援」とは、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう。

 

 というように、どこにも「A型」「B型」の違いは示されていません。

 

 では、一体どこで、「A型」と「B型」の区分がされているのでしょうか?

そのヒントは、条文の中にあります。第14項の最後に書かれている「厚生労働省で定める便宜」の部分です。

 

「A型」と「B型」の区分は、法律を実際に施行するために、行政機関が定めた省令と呼ばれる「命令」=この場合は、厚生労働省令に記されています。

 

 少し脱線しますが、法律と省令の関係について、簡単に説明しておきます。

 

 日本の最高法規は、いうまでもなく、日本国憲法です。その下に国会で定めた「法律」があります。

平成273月現在で、わが国の法律は1935本あります。よく耳にする「六法全書」に収められているのは、憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法の6つの法律。「障害者基本法」や「教育基本法」のように、「基本法」と名前がつく法律は、国の制度・政策に関する理念や基本方針を謳ったもので、44本あります。

 政省令と呼ばれるものは、法律を実際に施行するために、行政機関が定めた「命令」です。内閣が定めるものを「政令」、各省庁の大臣が個別に定めるものを「省令」といいます。

 政省令の下には、各省庁の事務方が決めた細かい解釈ルールを定める「通知」があります。

 

 就労継続支援「A型」と「B型」の違いは、「障害者総合支援法施行規則」(正式名称は、法律名と同じで、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則」といいます)という厚生労働省令によって定められています。

 

 省令の第6条の10に次のように書かれています。

 

○第6条の10  法(前述の「障害者総合支援法」を指します)第5条第14 に規定する厚生労働省令で定める便宜は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める便宜とする。 

  就労継続支援A型 通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して行う雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援 

  就労継続支援B型 通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して行う就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援 

 

 何やら小難しそうに書かれていますが、波線の部分に注目していただくと、「A型」は「雇用契約に基づく就労が可能である者」、「B型」は「雇用契約に基づく就労が困難である者」とあります。つまり、「A型」と「B型」の違いは、省令に基づく「雇用契約の有無」のただ1点ということになります。

 

 「A型」は、利用者に対して、最低賃金を支給することが原則となっています。「なぜ、A型は最低賃金を支払わなければならないか?」。それは、つまり、「雇用契約」があるからということになります。

 

ここで、また少し脱線してしまいますが、「労働基準法」では、「雇用契約」ではなく「労働契約」という表現が使われています。「民法」では、契約した相手のために労働に従事し、その対価として報酬を受け取る契約を指して「雇用契約」としています。

1947年に「労働基準法」が制定されるまでは、労使間の問題は「民法」に基づき、処理されていました。「民法」は、私人間のことについて定めた法律で、「契約の自由という原理」に基づき、当事者間の契約は自由であり、国は干渉しないとされています。「労働基準法」は、この原理を修正し、労働者を保護することを目的に制定されました。「労働基準法」に規定のないものは「民法」が適用されますが、「労働基準法」と「民法」で結論が異なる問題の場合は、「労働基準法」が優先されるしくみになっています。

「労働基準法」をはじめとする労働関連の法律では、「雇用契約」に労働者保護の制約を加えた契約を指して「労働契約」としています。

就労継続支援A型は、労働法規を適用し、利用者の労働者性を担保することを目的とする事業ですから、本来であれば、省令の文言も「雇用契約に基づく就労」ではなく、「労働契約に基づく就労(労働)」とした方が、すっきりするのではないかと思います。

 

いずれにせよ、A型の「雇用契約」は、「労働契約」と考えられますから、労働法規が適用され、最低賃金を支払わなければならないことになります。

 

障害者総合支援法に基づく「障害福祉サービス」の中で、唯一、労働法規の適用が規定されているのが、就労継続支援事業A型です。

労働法規が適用されることで、働くことに関して、障害のある人が障害のない人と初めて同じ土俵に立つことができます。

CRPD(国連・障害者権利条約)の第27条 労働及び雇用では、「障害者が他の者との平等を基礎として労働についての権利を有することを認める。」とし、さらに「あらゆる形態の雇用に係る全ての事項に関し、障害に基づく差別を禁止すること」と定めています。

ここで「あらゆる形態の雇用」と書かれていることが、とても重要に思えます。

「あらゆる形態の雇用」に、たとえば、就労継続支援B型で働く障害者が含まるか否かということについては、様々な意見があります。実際に、自立支援法以前の「作業所」で、低賃金で障害者を「働かせていた」事業者に対して、違法と判断され、改善を求められるという事例もありました。

一般社団法人ディーセントワールドは、就労継続支援A型に特化したかたちで、「障害福祉サービス」事業を経営するために、2年前に既存の社会福祉法人から独立するかたちで設立した法人です。

法人の経営理念の1番目に掲げている目標は、「障害のある人のディーセント・ワークの実現」をめざすことです。

日々、事業経営にとりくみながら、「本当の意味で、障害のある人のディーセント・ワークを実現するためには、就労継続支援A型といった福祉のサービスの枠組みの中で、障害のある人を雇用すること自体、間違っているのではないか」と、実は考えています。

本来は、障害のある人もない人も、働く意欲と能力のある人は、一般の企業等で働けることが理想的です。ただ、現実的には、働く意欲のある障害のある人全てが、自分の希望する職に就くことは難しく、また、折角、職に就いても、周囲の理解や配慮(合理的配慮)が足りず、就労を継続することが困難になってしまうことが多々あります。

そうしたことから、就労継続支援A型は、理想と現実のギャップを埋める役割を担う「中間的」かつ「過渡的」な事業ではないかと考えています。

 

長くなってしまったので、今回はこの辺りで終わりにし、次回は、就労継続支援A型の担うべき役割について、もう少し、掘り下げてみようと思います。

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