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ぶれることなく「理念」を貫きとおす姿勢こそがFC町田ゼルビアの「美学」なのだ

 ウィズ町田の広報紙で、第1号から、連載を担当していたコーナー(『理事長の本棚』)を、第50号をもって終了することになりました。

 毎号、「本」を読んで感じたこと、学んだことと、福祉や就労支援、被災地支援と結びつけて、文章を書いてきましたが、最終回は、応援しているゼルビアのことを思いっきり好きなように書かせてもらいました。

 J2に昇格後、とっても苦しんでいるゼルビアですが、紹介している「本」にもある通り、このクラブ(チーム)は数多の試練を乗り越えることで、成長してきたクラブ(チーム)です。

 昇格前の酒井選手がいつも言っていたように、「最後に笑うのは俺たち」と、おおらかな気分で、応援し続けていきたいという願いを込めて、紙版より一足早く、お届けします。

 次の草津戦、期待しています。

 

(以下、広報紙「With」№50から)

ぶれることなく「理念」を貫きとおす姿勢こそが「美学」なのだ

 買ったばかりの靴は、とにかく歩きづらいものだ。
 新品の革靴なら、尚更だ。
 硬い皮革が足指や踵にあたって痛い。
 靴ずれができて、顔をしかめることもある。
 痛みをこらえて、足を引きずり歩く姿は傍目には滑稽にちがいない。
 たまらず、靴を脱ぎすてて、裸足で歩きたいという衝動にかられる。

 それでも辛抱して、時間をかけて、履きならしていくと、
 やがて、靴は足にしっくりとなじんでくる。
 そうしたら、履きならした靴のひもをきゅっと結んで街にでかけてみよう。
 背筋をぴんと伸ばし、
 普段の120%の大股で風を切って、颯爽と歩いてみよう。
 きっと気分は壮快。
 自分が信じる「理念」を貫きとおして、遠くどこまでも歩いていきたくなる。

 1993年に開幕したJリーグ。
 発足から20年目のシーズンを迎えた2012年。
 この記念すべき年に、Jリーグ昇格を果たし、ディビジョン2(J2)の舞台でリーグ戦を戦うことになったクラブがある。
 ウィズ町田の地元、東京都町田市をホームタウンとするサッカークラブ『FC町田ゼルビア』がそうだ。


 『FC町田ゼルビアの美学~Jリーグ昇格を勝ち取った市民クラブの挑戦~』(佐藤拓也著・出版芸術社)は、『FC町田ゼルビア』が、Jリーグ昇格をめざし、下位のカテゴリーであるJFL(日本フットボールリーグ)で戦った2010年、11年のシーズンを中心に、Jリーグ入会までの道のりを克明に綴った著者渾身のノンフィクションだ。


 その道のりは、けっして平坦なものではなかった。
 2008年。全国地域リーグ決勝大会の激戦を勝ち抜き、JFLに昇格。
 2009年。JFLに参戦。健闘はしたものの6位の成績で終わる。
 2010年。JFLで4位以内、ホームゲームでの平均観客動員数3千名以上といったJリーグ昇格条件を満たしながらも、スタジアムの問題で「不合格」。
 2011年も3年連続「不合格」となる寸前まで追い詰められた。

 「絶体絶命のピンチを、どう乗り切り、Jリーグ昇格の夢を実現させたか」…。
『FC町田ゼルビア』やサッカーにまったく興味・関心のない人がお読みになっても、きっと「おもしろい!」と感じるにちがいないドラマあふれる逸話が満載の内容は、まるで優れた小説を読むようだ。
 
 ウィズ町田の事業所である『スワンカフェ&ベーカリー町田店』は、『FC町田ゼルビア』がJFLに昇格した2009年から、クラブのささやかなスポンサーをさせていただいている。
 一介の福祉事業所が特定のプロスポーツチームのスポンサーをやることに関して、いろいろとご意見のある方もいらっしゃるだろうが、本の中に共感する明確な答えがあった。

 「玉川学園はプロサッカーチームのスポンサーになるのではなく、地域貢献として町田ゼルビアの活動に参画する」。

 多くの社会福祉法人が、地域に開かれた法人をめざし、「地域貢献」や「社会貢献」の理念を掲げているのと同様に、『スワン町田店』は、『FC町田ゼルビア』を応援することを通して、クラブと一緒になって、自分たちが暮らすこの街を活性化していきたいと考えている。
 
 タイトルにある『美学』については、あとがきにこう記されている。(いくつもの「困難」を乗り越えてきた「ゼルビア」のとりくみに対して)「…そもそも困難が生まれるのも、クラブが「理念」を貫いているからこそである。…中略…大事なことは困難を乗り越えることができるか否か、ではない。困難にいかにして立ち向かうか、である。
 「理念」と向き合い、地域の人たちと手を取り合いながら困難に立ち向かうことこそ、町田ゼルビアの「美学」なのである。「理念」ではなく、「理念」を貫く姿勢に「美学」は存在するのだ。…」
 理念をぶらすことなく、貫きとおすことの大切さ。すべての世界に通じることだと思う。

 
 昇格したばかりのチームは、とにかく苦戦するものだ。
(2010年に昇格した『ギラヴァンツ北九州』は、その年、わずか一勝しかあげられなかった)
 大企業をスポンサーに持たない「市民クラブ」なら、尚更だ。
(資金に乏しく、選手の補強もままならない)
 JFLとは数段ちがう、相手チームのスピードやボディコンタクトの強さに振り切られ、弾きとばされる。
 なかなか枠に飛ばないシュートや、不注意なバックパスに、(サポーターが)顔をしかめる。
 決まりごとのように、後半残り10分でぱたっと足がとまり、セットプレーからの失点を繰り返す場面には、思わず目が点になる。
 たまらず、レプリカのユニフォームを脱ぎすてて、裸で叫びたいという衝動にかられる。


 それでも辛抱して、あきらめずに、声援を送りつづけていくことで、
 やがて、チームは成長し、「J」にしっくりとなじんでくるにちがいない。
 そうしたら、履きなれた靴のひもをきゅっと結んで野津田(町田市立陸上競技場)にでかけてみよう。
 青いものを身にまとい、普段の120%の大声でピッチに向けて、思いの丈をぶつけてみよう。
 きっと気分は壮快。
 自分たちが信じる「理念」を貫き、駆けつづける選手たちを、そして『FC町田ゼルビア』というクラブを永くいつまでも応援したくなる気持ちになるにちがいない。

 『理事長の本棚』の連載は、第50回となる今回をもって終了となります。長らくご愛読いただき、ありがとうございます。次号から新たにスタートする『リーダーの本棚』に、どうぞご期待ください。
 
 (社会福祉法人ウィズ町田 理事長 天野貴彦)

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