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2010年11月

「デスクがなくなっているかもよ!」の冗談を軽く受け流したKさんの本採用決定!

 今日は、東京都大田福祉工場へ職場訪問。ここでは、この10月から「らいむ」の登録者のKさんが働いています。2ヶ月の試用期間が今日で終わるというタイミングでの職場訪問。ご本人の仕事の様子を見させていただく前に、担当課長さんからお話を伺ったところ、「非常によくがんばってくれており、何も問題はない」とのご評価をいただきました。

 いつも周囲への気配りを忘れないKさん。今日の訪問に先立ち、ご本人からは、「周囲の皆さんが納期に間に合わないからと残業をされている」「自分はまだまだ力不足だが、お手伝いしなくても良いのだろうか?」「毎日、残業することは無理だけれど、月に10時間くらいであれば残業も厭わないが、どうだろうか?」という相談を受けていました。

 Kさんの気持ちを課長にお伝えしたところ、「今はまだそんなに忙しい時期でもないから、そんなに気にしなくても良い」「(でも)Kさんの気持ちはとってもありがたい」「本当に忙しくなってきたら、上限を月に10時間以内と決めて、Kさんにも残業をお願いしたい」…、「でも、Kさんも遠慮しないで、自分に直接、伝えてくれてもいいのに…」という非常にありがたい言葉をいただきました。

 「Kさんは、くそ真面目な方なので、きっと、『自分のような新米が、課長さんに直接、お話するなんてできない』と遠慮されたのだと思います」、「課長さんからも一声かけておいてください」とお願いしたところ、「分かった!」ということでした。

 昼食をいっしょに取りながら、Kさんに、課長さんとのやりとりを伝えたところ、ホッとしや様子でした。別れ際に冗談で、「今日で試用期間が満了ということだけど、職場に戻ったら、デスクがないかもしれないよ!」と、脅かしてみたら、先ほど、今日の訪問のお礼のメールがKさんから届きました。

 デスクがなくなるどころか、「本採用」の辞令書をいただいたということです。Kさん、やったね、おめでとう! 今日のカレーライスは、天野からのささやかな前祝いということで、今度は、Kさん主催の焼き肉パーティーをお願いしますよ!(笑)

 Kさんの職場は最寄り駅が京浜急行の大森町ということで、今日は久しぶりに京浜急行に乗ることができて嬉しかった! 横浜ー品川間は、関東の私鉄では、つくばエキスプレスに次ぐ速さの、最高時速120キロに設定されているので、あのスピード感と加速力が堪らない。帰りは、京急川崎駅から、快速特急の先頭車両に乗り換えて、運転席を覗いて、本当に120キロ出ているか確かめてきました。子安あたりで、並走するJRの京浜東北線の電車を、さーーっと抜き去ったときには、もう興奮のるつぼでした。

 120キロちゃんと出ていました。というより、運転手のマスコン裁きも、普段、乗りまれている小田急なんかとは違って、レーサーのような動きで、スピードが落ちてくると、手前にガーンと引いて加速。120キロに達すると、警告音が鳴るので、向こうに側に戻し、また、少しスピードが落ちると、手前に引くという繰り返し。それを見ているだけでも、楽しくなってきます。

 なんて、鉄道オタク的なことを書いてしまいましたが、京急に乗れるならいつでも馳せ参じますから、Kさん、御用のある際にはいつでもお申し付けください。

(天野)

 

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社長にファイティングポーズで挑むSくんの就職1年祝い

 好天に恵まれた日曜日。今朝は、グループホーム「みおん」の宿直明けです。

 今月から1名新たな入居者を迎え、6名になった「みおん」。定員は、7名になっていますが、1Fの共有スペースにある1部屋は、独立住居型の2F、3Fと違って、プライバシーの面で、ちょっと難があるので、別の活用法を考えたいと思っています。

 6名の入居者のうち、2名は今日も早朝から仕事に出かけていきました。今の世の中、なかなか、カレンダー通りに休めないのは、障害のある人もない人も同じです。

 あとの4名のうち、1名は昨夜から、友達と遊びに出かけていて不在。他の3名は、遅めの朝食を取って、部屋に戻っていきました。今月、入居した19歳の青年は、今週、企業面接を受ける予定です。ネクタイがひとりでうまく結べないというので、一度結んだものを緩めて、頭から被って、締め直せるようにして、渡しておきました。あとは、当日朝の当番の世話人さんに身だしなみチェックをお願いしておくことにします。

 先々週は、ほとんど毎日、ジョブコーチ支援に入り、先週は一転して、原稿書き中心の日々でした。きょうされん就労支援部会で8月におこなった関西地方の視察のうち、私が担当していた大阪府・箕面市の「社会的雇用」(「障害者事業所制度)」のレポートをなんとか書き終えたので、気持ちが軽くなりました。でも、考えてみると、まだ9月におこなった島根県視察のレポートがまだ残っています。ん、がんばらねば!

 先週末は、市内のクリーニング工場で働いている「らいむ」の登録者Sくんが、就職1年を達成したので、ご本人のリクエストに応えて、焼き肉屋でお祝いをしました。

 Sくんとは、私が「らいむ」に来る前に勤務していた「Cスクエアあじさい」の時からのお付き合いです。それなりに仕事はできるのですが、しょっちゅう他のメンバーと口ゲンカをしたり、仕事が嫌になると、「嘘の発作」を起こしては、私から怒鳴られていました。

 「らいむ」が開設すると、登録者となり、有料老人ホームの清掃の仕事に就きましたが、就労意識がまだまだ弱く、しゅっちゅう、誰も居ない部屋でさぼったり、「調子が悪い」と言っては、医務室のベッドで休ませてもらったりしていました。そんなわけで、結局は1年足らずで退職。その後は、また、「Cスクエア」「なないろ」に通所していました。

 お母さんを亡くした後、社協の通勤寮に入寮。一時、精神的に不安な状態になり、精神科の病院に入院したこともありました。昨年の11月に縁あって、今の職場に就職しましたが、正直、「あまり長続きはしないかな?」と思っていました。

 最初の頃は、予想通り、なまけ癖が何度も顔を出しましたが、親分肌の社長さんや、兄貴分の先輩に、叱咤激励されながら、少しずつ成長し、仕事に対する意識も変わってきました。とは言え、社長に怒られたので、「なんだこの野郎!」と叫んで、ファイティングポーズを取っただの、「嘘の発作」で廊下に寝転がっていたら、それを見破った社長から、「おい、誰か水を持ってこい、(気付けの)水をぶかっけろ!」と言われて、慌てて飛び起きたりと、相変わらず、いろいろやってくれているみたいです。

 そんなSくんですが、会社を訪問する度に、社長さんからは、「あいつに足りないのは闘争心だ」「仕事は遅いが、素直な奴」「ちょっとは成長したかな」「長く働かせてやりたい」とありがたい言葉をいただいています。

 焼き肉屋でも、「先週も社長とケンカをしました」「もう明日から来るなと言われました」と、悪びれる風もなく報告してくるSくん。「普通の会社だったら、もう、とっくの昔にクビになっているの、分かる?」「また、社長とケンカするの?」と尋ねると、「ちゃんと謝りました。社長さんの言っていることが正しいから…」と、殊勝な言葉が返ってきました。

 かって、日本の障害者雇用を中小企業が中心になって支えていた時期がありました。知的障害者の雇用義務制度やダブルカウント制度、特例子会社制度のない時期に、知的障害のある人の働く力を貴重な労働力として積極的に受け入れていたのが中小企業です。この時期には、中小企業の実雇用率は、法定雇用率を上回っていました。

 ところが、平成22年の6月1日調査では、従業員1000人以上の大企業の実雇用率が1.9%であるのに対して、56人~99人規模の企業の実雇用率は、前年度を下回る1.42%になっています。深刻な経済不況が続く中で、資本力に乏しい中小企業の障害者雇用は、「風前の灯」となりつつあります。ダブルカウント制度にせよ、特例子会社制度にせよ、やはり日本の障害者雇用の制度は、本人や中小企業ではなく、大企業優先の制度であると言わざるを得ません。

 戦後日本の高度経済成長の土台を支えていたのは、まぎれもなく、元気で、人並みにがんばりさえすれば、夢に手が届くという希望にあふれていた中小企業です。そこでは、障害のある人も、あたりまえに働けていたはずです。

 社長に、怒られてしまうかもしれませんが、Sくんの働く姿を見ると、「旧き(ふるき)良き日本の障害者雇用は、きっとこんな風だったんだろうな?」と思ってしまいます。

 生ビール1杯、ラムネ2本、緑茶2杯、焼き肉を6皿、「辛いものに飢えていたんです」とキムチを3皿もお代わりして、ライスを食べた後、更にお茶漬けまで食べていたSくんの食べっぷりに呆れながらも、「よし、今度は2年続いたら、またお祝いをしよう!」と声をかけてしまいました。(もう、破産しそう!?)

 最後にSくんに「社長さんへの感謝の気持ちを忘れないこと」と話をしました。「また、社長さんとケンカして、ファイティングポーズを取る?」と質問したら、「そんなことはしませんよ!」「社長さんの言うことが正しいから」と答えていたので、きっと分かってくれたとは思うのですが…。

(天野)

 

 

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見えなかったものが、観えてくる、「きょうされん」の『安居楽業ゼミナール』

 先週は、紅葉シーズン真っ盛りの京都へ研修に行ってきました。

 「きょうされん」が主催する『安居楽業ゼミナール・はたらく」の研修会です。「安居楽業」は、「あんきょらくぎょう」と読みます。「居に安(やす)んじ、業(ぎょう)を楽しむ」とも読み、世が治まり、生活が安定し、みんながそれぞれの仕事に励んでいる状態のことをさす言葉だそうです。「安居楽業ゼミナール」では、障害のある人たちの「安居楽業」のあり方を、「はたらく」「くらし」「ささえる」の3つの視点から深めることを目的にしており、今回は、「はたらく」をテーマにする研修会でした。

 2日間の研修会の内容は次の通りです。

(1日目)

 プログラム1.基調報告「障害者施策の最新事情」:報告者は、「きょうされん」常任理事で、京都府舞鶴市にある精神障害のある人たちが中心になって働いているレストラン「ほのぼの屋」の支配人(ご本人は、利用者の方に使われている「被支配人」といつも言われていますが…)の西澤心さんでした。

 西澤さんとは、「きょうされん」の就労支援部会でご一緒させていただいていますが、今回は、ILOの提唱する「ディーセント・ワーク」の考え方を中心に、障害のある人の「はたらく」を分かりやすく、お話していただきました。

 ちなみに、12月9日には、町田作業所連絡会(まちされん)で、西澤さんを含めて、全国で「はたらく」先駆的なとりくみをされている方、3名をお招きして、勉強会(シンポジウム)を開催する予定です。ぜひ、お楽しみに!

 プログラム2.第1講義「働くことの国際比較」:講師は、法政大学名誉教授で、「障がい者制度改革推進会議のメンバーでもある松井亮輔先生でした。

 EU諸国の障害者雇用のとりくみを今回は、時間の関係で、フランス、オランダを中心に詳しく解説していただきました。日本が今後、「国連・障害者権利条約」を批准するためには、雇用の分野においては、「障害者雇用促進法」の大幅な改正が必要になります。また、就労継続支援B型事業所等への労働法規の適用や、これらの事業所で働く障害のある人たちの「労働者性」をどのように考えていくかといった難しい課題もあります。

 「雇用か福祉か」といった二者択一の従来の考え方では、もはや、国際水準から大きくかけ離れていることは明白で、「雇用も福祉も(一人ひとりのニーズに応じて、いくつもの選択肢の中から、必要なものを自由に選べる)」という考え方に、今後、どう転換していくか、そのために、先進諸国から何をどう学ぶかといった問題提起がなされたと受けとめました。

 プログラム3.現場からの報告と問題提起「はたらくを支えるわが事業」:報告者は、滋賀県の「社会福祉法人共生シンフォニー・がんばカンパニー」の中崎ひとみさんと、大阪府箕面市の「財団法人箕面市障害者事業団」の栗原久さんのおふたりでした。

 ちょうど、8月に「きょうされん」の就労支援部会で、滋賀県と箕面市を訪問させていただいた折に、事業所の見学とお話を聞かせていただいたおふたりです。

 一般就労と福祉的就労の狭間を埋める第3の道として、箕面市と滋賀県でとりくまれている「社会的事業所」「社会的雇用」。あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、「雇用か福祉か」を「雇用も福祉も」に転換させていくうえで、必ずや「触媒」の役割を果たすであろう「考え方」です。箕面市や滋賀県で、先駆的なとりくみがすでに実施され、大きな効果をあげているにもかかわらず、「社会的事業所」「社会的雇用」が、ナショナルスタンダード(国をあげてのとりくみ)にならないことが、大きな問題点であるといえます。

 「きょうされん」の就労支援部会では、これから年度末に向けて、「今後の障害者就労支援の拡充と障害者雇用の促進についての提言」をまとめていくことになるのですが、8月に現場を視察させていただいたことを客観的に振り返る最高の機会となりました。

 プログラム4.ナイトゼミナール「笑講演・落語の世界で、師は弟子をいかに育てるか」:講師は31年間の労働組合専従を経て、庶民を励ます笑いの道に進んで10数年という笑工房代表で落語作家の小林康二さんでした。

 「強者が弱者を笑うのは、本当の笑いではない」「弱者が強者を笑いとばす。それで、笑った後も、腹の中がほんわかと、あったかいのが本物の笑い」。関西で言えば、藤山寛美や6代目笑福亭松鶴、東京であれば、寅さんの笑い。夜の講義は「きっついな!」と思っていましたが、時間が経つのを忘れるほどの楽しくて、ためになるお話でした。

 落語のお師匠さんが弟子に教えるは、1に挨拶、2に時間厳守、そして、「芸は教わるのではなく盗め!」ということだそうです。挨拶がきちんとできれば、「人に好かれる」。時間をきちんと守れば、「信用を得る」。「芸を盗む」ためには、「何よりも努力が必要」ということです。「らいむ」の実践の中で、「就職するためには…」といつも話していることと、「おんなじ(同じ)やなぁ」と思いました。

(2日目)

 プログラム1:直言シンポ「働きがいを手にしたときに」:シンポジストは、和歌山県の「就業・生活支援センター つれもて」の加藤直人さん、滋賀県の「社会的事業所 ゆう」の堀尾毅さん、奈良県の「就労移行支援事業 すたぁと」の島耕治さんの3名。コーディネーターは、西澤さんでした。

 3時間に及ぶシンポジウム。しかも、参加者は、関西人ばかりで、これはもう、「こてこて」になるのは、目に見えていましたが、予想に違わず、「おもろい」シンポジウムになりました。加藤さんの、「就労支援には、画一的ではないパーソナルな支援(その人のニーズに応じた支援)が必要」。堀尾さんの「年金でもらう金と、仕事で稼いだ金は、金の価値が違う」。島さんの「(就労移行支援事業所を)風が通り抜ける場所ではなく、(新しい)風を起す場所にしていきたい」といった発言には、大きな刺激を受けました。

 今回は、一参加者として、おとなしくしていようと思ったにもかかわらず、西澤さんから突然、指定発言の指名を受けて、「らいむ」の話も少しさせていただきました。町田市の「職場定着支援」に特化した新しい補助事業の開始については、みなさん、強い関心を寄せられていました。(この詳細は、また、今度、ご報告します)

 プログラム2.最終講義「障害のある人びとの雇用・就労支援の近未来図」:研修会の最後を飾る講師は、「きょうされん」の常務理事でもあり、「障がい者制度改革推進会議」の議長代理を務められている藤井克徳さん。

 藤井さんのお話は、やはり、いつ聞いても、本当に刺激的であり、たくさんのことを学ばせていただけます。

 表題の「障害のある人々の雇用・就労支援の近未来図」を描くために、欠かすことができない3大キーワードが、「ディーセント・ワーク」、「賃金補填、」「社会的雇用」であるというお話は、ここまで一連の講義やお話を聞いたこともあって、ストンと胸に落ちてきました。

 これまでに、藤井さんが、書いた論文やエッセイをまとめた書籍が、10月に発刊されました。タイトルは、『見えないけれど 観えるもの』(やどかり出版)。

 本のタイトルから、おわかりいただけるように、藤井さんは、今、まったく目が見えない状況にある方です。(こんな言い方は失礼ですが)それでいて、日本の障害者運動の先頭に立ち、日々、獅子奮迅のご活躍をされている方です。

 「これまで見えたいたものが、まったく見えなくなってしまう」という状況を普通に考えれば、誰しも絶望感を抱いてしまって当たり前です。にもかかわらず、「見えなくなったこと」で、かえって感覚が研ぎ澄まされ、本当に「観ること」ができるようになってきたと言える本物の強さを持った方だと思い、心から尊敬しています。

 今回の最終講義も「見えていなかったもの、まったく分からなかったもの」が、おぼろげながら、「見えてきたかな?」と思わせていただけるお話でした。

 こんなに内容のいっぱい詰まった研修会にもかかわらず、今回の参加者が、たったの100名というのは、残念というよりも、思わず、「もったいない!」と、叫びたい気持ちでした。

 今年度の『安居楽業ゼミナール』の第3弾「くらし」版が、12月16日(木)、17日(金)の2日間、横浜市(ウィリング横浜)で開催されます。絶対に損しない、そして最高に学べる研修会なので、たくさんの方にご参加いただけることを願っています。(参加申し込みの方法等、詳しくは、「きょうされん」のホームページをご覧ください)

(天野)

  

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