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2008年12月

「応益負担」廃止か!??

 今朝の読売新聞で、与党の「障害者自立支援に関するプロジェクトチーム」の同法見直しの原案が明らかになったことが報道された。

 「1割の自己負担」から「全額公費負担」に改める。「応益負担」を「応能負担」に戻すというもの。

 「支払い能力のある人には、応分の負担を求める枠組みは維持する」と、なんだかわけのわからないこともあるが、とにかく、就労移行支援や就労継続支援などの就労系サービスでは、負担を求めないという方針であるらしい。

 午後にでも地元の代議士の先生にお願いして、原案の全文を手に入れるようにしてみますが、まずは第一報ということで、下記をご覧になってください。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20081217-OYT1T00438.htm

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「模範社員」のOさんを支えてくださったKさんに感謝!

 JR中央線の武蔵境駅から徒歩15分程にある武蔵野赤十字病院に職場訪問させていただいた。

 武蔵野赤十字病院では、施設課営繕係という部署で、6名の障がいのある人を雇用していただいている。主な業務は、病院内の各部署から回収した不要になったレセプト用紙などをシュレッダーにかける仕事と、敷地内の草刈や花壇の手入れなどをおこなっている。(町田の市民病院でもこうした業務の切り出しをすれば、知的障がいのある人の仕事をつくることができるにちがいないのに…)

 らいむの登録者のOさんは、ここに勤務して、6年半になる。らいむができる以前から勤務しており、パソコンのサークル活動の仲間から、らいむの話を聞いて、去年の5月にらいむの登録者になった。

 登録してから、半年くらいの間は、時たま電話をかけてきては、近況報告をしてもらう程度の軽い支援であったが、今年になってすぐに、ハローワーク三鷹の職員さんから連絡をいただき、職場で少し心配な様子が見られるので、職場訪問への同行をお願いしたいという依頼を受けた。

 職場のトイレの個室内で、なにやら物騒なことを独り言していたという話であったが、職場訪問し、本人から話を聞いてみると、新人が入ったことで、Oさんが業務の指示などを任せられる立場になり、そのことがプレッシャーになって、少し不安が強まっていたということであったが、それと併せて、他の障がいのある人のところには、地元の支援機関の人が職場訪問に来るのに、自分のところには来てくれないという不満もあったようだ。

 Oさんに、それまで、なかなか訪問できなかったことを詫び、今後は、3ヶ月に1度は必ず職場を訪問することを約束した。実際、職場の上司の方からお話を伺っても、「とにかく真面目で、よく頑張っている」(毎朝5時に起きて、6時30分に家をでる)「みんなの模範になるような社員」とすこぶる高い評価をいただいており、勤務上、何の問題もない人だが、Oさんにとっては、自分にも、みんなと同じように支援機関がついていて、ちゃんと応援してくれているんだということが、仕事のささやかな支えになっているのかもしれない。

 今日の訪問に関しては、Oさんから「是非、訪問してほしい」と特別に要望を受けた。理由を訊くと、Oさんと一緒に入社され、Oさんを初めとする5人の知的障がいのある方を指導する立場で働いていらしゃったKさんが、今日16日付で定年退職されるので、らいむからも一言ご挨拶を願いたいということだった。

 Kさんは、軽度の下肢障がいをお持ちの方。Oさんが6年半がんばってこれたのも、もちろん、Kさんの支えがあってのこと。訪問するたびに、「Oさんは本当にがんばってくれている」「こんなことができるようになった」と、Oさんの良さをしっかりとつかんだ温かい言葉をいただいていた。

 現役最後の日にもかかわらず、Kさんは、普段とまったく同じように、Oさんたちに絶えず声をかけながら、先頭に立って働いていらっしゃった。これまでOさんたちがお世話になったご挨拶をさせていただくと、「俺が居なくなると、Oさんが一番の古株になってしまう。でも、Oさんなら、きっとみんなをうまくリードしていってくれるよ」「管理の方(ほう)にも、Oさんたちには、無理はさせず、力をうまく引き出すようにと話しておいた」と、最後まで、Oさんたちを気遣う姿勢を示してくださっていた。

 きっとお互い、本当は寂しい気持ちでいっぱいのはずなのに、笑顔で言葉を交わすKさんとOさんの姿を見ていて、胸がジーンと熱くなった。そして、Kさんには及ばずとも、これからも、Oさんの就労を支えていくことを心に誓った。

 夕方から次の面談の約束があったので、Oさんの終業時間を待たずに、一足早くお暇させていただいた。駅までの帰り道、木枯らしが冷たかったけれど、心はほんわりと暖かかった。

 Kさんの第2の人生が、幸多きものとなりますように!

(天野)

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「町田、ガンバレ!」と温かい野次をいただいた参考人質疑

 衆議院厚生労働委員会の参考人質疑に出席して、意見陳述をしてきました。インターネットの下記サイト「衆議院TV」のビデオライブラリ 12月9日 厚生労働委員会から意見陳述及び参考人質疑の様子を観ることができますので、興味のある方はご覧になってみてください。

http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.cfm

 それにしても朝の小田急線のラッシュはすごかった。らいむの登録者の人たちには、できる限り、通勤の負担を減らしてもらいたいという願いから、都心とは逆の方向や、比較的、混雑の少ないJR横浜線沿線の職場を開拓するようにしていますが、何人かは、やはりラッシュの時間帯に都心の職場に向かう人がいます。毎日、このラッシュを経験しているのかと思うと、本当に頭が下がる思いでした。

 参考人質疑がおこなわれたのは、衆議院第16委員室。本会議場とは違いますが、それでも相当な広さのある会場でした。議員の先生方と向かい合わせの席で、ずっとこちらを注目されているので、結構、プレッシャーを感じました。

 発言の際には、委員長から「天野参考人」と声がかかります。声がかかると挙手して、返事をしてから、発言台に向かいます。意見陳述の際は、原稿を用意していたので、制限時間にさえ、気をつけていればよかったのですが、質疑は、その場で考えて、答えなければならないので、大変でした。発言台の上の2本のマイクは、高感度で、ビンビン響き渡る感じで、とても気持ちのよいものでした。

 昨日、「参考人質疑に出席します」とお伝えしてあったので、地元選出の伊藤公介代議士(代議士の所属は予算委員会)が、わざわざ応援に駆けつけてくださいました。天野が意見陳述の冒頭で、「町田市障がい者就労・生活支援センター らいむの…」と、自己紹介を始めると、「町田、がんばれ!」と温かい野次を飛ばしていただきました。困った?先輩(大学が同じです)ですが、おかげで、いらない緊張もとれて楽になりました。先輩ありがとうございます。

 今回は野党(共産党)推薦枠の出席ということで、もしかすると、与党の先生方からは厳しい質問を浴びせられるのではないかと、正直、戦々恐々としていたのですが、杞憂に終わり、与野党問わず、私たちの声に真剣に耳を傾けてくださる姿勢に感激しました。

 途中休憩はなく、3時間近く、席を立つことができないことが少ししんどかったのですが、なんとか無事?大役を終えることができました。委員長をはじめ、質問に立った先生方から労いの言葉をかけていただき、委員室を後にしました。

 帰る前に、議員会館の伊藤代議士のところに挨拶にうかがったところ、「良かった、良かった!」とまた、労いの言葉をかけていただきました。この日は朝8時から、厚労省との次年度の報酬単価をめぐってのやりとりがあったとのこと。「障害者支援議員連盟」の会長として、伊藤代議士もがんがんとやりあってきたとのこと。資料を後日、送っていただく約束をさせていただきました。

 ところで、今日の参考人質疑出頭の日当はいくらでしょう? 交通費と合せて、20,100円とのことです。ここに書いてしまった以上は、「お疲れ様」と飲んでしまうわけにはいかないので、「ジョブコーチ支援のノウハウ」を紹介したDVDを、らいむで購入する費用に使わせてもらうことにしました。

 せりがや会館の退館時間になるので、今日はここまで。

(天野)

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明日の委員会参考人質疑の準備が整いました

 明日の衆議院厚生労働員会の参考人質疑に意見陳述用の資料の準備がようやく終わりました。今日も午前中から外出していたため、午後遅くにらいむに戻ってから、取り掛かり、何とか閉館時間前に終わり、ホッと一息です。

 昨日のブログに、コメントをいただき、ありがとうございます。最初の意見陳述は15分という限られた時間のため、どうしても総論的な陳述になってしまいますが、その後、各会派(5会派あります)20分ずつの質疑の時間があるので、その中で、事例的な話をしてくる予定です。参考人は、各会派から推薦するかたちとなっており、天野を推薦していただいた会派の代表議員には、「このような質問をお願いします」と打合せさせていただいています。

 ご提案いただいた1の自立支援法の新体系に関わる内容についてjは、今回は雇用促進法絡みの質疑であるため、どこまで話ができるかは不明ですが、福祉と雇用の連携ということでできる限り、意見を述べてくるつもりです。2のJC養成の話、3の定着支援の困難さについては、「らいむ」の事例をたっぷりとお話させていただくつもりでいます。

 今回の私は、野党政党の推薦枠での出席となりますが、障害者の就労支援の課題については、与党も野党もありませんから、地元選出の伊藤代議士(自立支援法関係の議連の代表でもあります)にも、明日の委員会参考人質疑に出席する旨、お伝えし、与党の先生方にも「お手柔らかにとお伝えください」という趣旨でお願いさせていただきました。

 明日は、いつもよりずっと早起きしなければなりませんが、これから英気を養ってくることにします。

(天野)

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衆議院厚生労働委員会では、こんなことを話してきます。

 昨日、今日と丸2日間かけて、12月9日の衆議院厚生労働委員会の意見陳述原稿を書き上げました。

 15分以内という時間厳守なので、この原稿そのものは、これからまた図表等の資料をつけて配布させていただくことにして、口頭陳述用のダイジェスト版も準備しました。

 昨日、帰宅したところ、衆議院の議会事務局から、法案等の資料がどっさり届いていました。面白かったのは、参考人の名簿にも、国会の先生方と同様に「君」の名称がついていたこと。また、発言の際には、挙手で「委員長!」と叫び、委員長の許可を得なければならないとのことです。

 まぁ、一生のうち、そんなに何度も経験できることではないと思うので、プレッシャーはありますが、自然体でがんばってこようと思っています。

 以下、長いですが、興味のある方は、原稿をお読みになってください。

衆議院厚生労働委員会 参考人質疑における意見陳述原稿(予定)

(参考人 天野 貴彦)

1.町田市障がい者就労・生活支援センター らいむの事業について

 町田市障がい者就労・生活支援センター らいむ(以下、「らいむ」)は、東京都の区市町村障害者就労支援センター事業の要綱に基づき、町田市が設置主体となり、社会福祉法人ウィズ町田が事業委託を受けて運営している事業です。

 「障害者の雇用の促進等に関する法律」(以下、「障害者雇用促進法」)に基づき、障害者の就業及びこれに伴う日常生活、社会生活上の相談・支援を一体的におこなう「障害者就業・生活支援センター」の制度がありますが、東京都の区市町村障害者就労支援センターは、国制度と目的を同じく、より身近な地域において、障害者の就職を支援するとともに、障害者が安心して長く働き続けられるよう、就労面と生活面の支援を一体的に提供しようとするものです。

 平成12年度にモデル事業として実施、翌13年度から本格実施となり、平成2012月現在、都内40区市に設置されています。

 「らいむ」の事業は、平成16年度から実施しています。事業対象者は、「一般企業で働くこと」を希望する障害のある人で、障害の種別や手帳の有無は問わず、すべての障害者を受け入れています。加えて、「障害者を雇用したい」「すでに雇用しているが問題を抱えている」といった事業主・企業からの相談等にも応じています。

就労支援の一般的な流れとしては、利用登録、本人把握のための面談、就職準備支援、企業面接同行、職場内支援、職場定着支援といった流れになっていますが、障害者一人ひとりのニーズに対応した個別支援が中心となるため、支援の進め方や内容も、対象者に応じて変わってきます。就労支援と併せて、就労生活を支えていくための生活支援をおこなっています。生活支援の内容は、年金、手帳、生活保護、住居、医療、結婚、子育て、家族関係、金銭トラブルの調整、余暇など多岐に渡っています。

就労・生活支援ともに「らいむ」単独ですべての課題に対応していくことは困難です。そのため、ハローワークや職業センター、福祉施設、医療機関、福祉事務所、保健所、教育機関、企業、家族など、地域の様々な分野と連携を取り、地域の中で就労・生活支援のネットワークを築き、支援をおこなっています。

障害者の就労や生活を、たとえば「らいむ」という1つの機関が「点で支えること」には、自ずと限界があります。地域の中にある様々な機関が連携と役割分担のネットワークを築き、「面で支えること」、障害のある人にとっては、「より多くのサポーターのいること」が、もっとも大切です。法律や制度の制定に当たっても、障害者を中心に置いたネットワークをどう築き上げていくかという視点が不可欠であると考えます。

2.「らいむ」の実績と事業の中から見えてきた課題について

 平成2011月末現在の、「らいむ」の利用登録者数は、473名です。障害別の内訳では、身体71名(15.0%)、知的165名(34.9%)、精神209名(44.2%)、その他28名(5.9%)となっています。身体に比べて、知的や精神の比率が高いことからは、知的や精神の人たちが、身体の人と比べて、就労に関しては、より多くの困難を抱え、そのため、より多くの支援を必要としていることがいえます。

「その他」には、発達障害や高次脳機能障害、てんかんの人などが含まれます。「障害者自立支援法」では、身体、知的、精神の3障害の一元化が目指されましたが、発達障害や高次脳機能障害などの人たちは、以前として法の対象外におかれたまま、就労に関しても、知的や精神の人よりも更に困難を抱え、多くの支援を必要としています。

 平成16年度の事業開始以来、「らいむ」の支援を受けて、これまでに延べ140名が新規に一般就労しています。障害別の内訳では、身体22名(15.7%)、知的59名(42.1%)、精神52名(37.1%)、その他7名(5.0%)となっています。140名のうち、現在も就労継続中の人は、81名で全体の職場定着率は、57.9%となっています。障害別に定着率を見ると、身体(63.6%)と知的(67.8%)では、全体の定着率を上回っている一方で、精神(46.2%)とその他(42.9%)では、全体を大きく下回っています。

 平成184月以降、精神障害者で精神保健福祉手帳を保持している人が、雇用率に算定されることにはなりましたが、依然として、雇用義務の対象にはなっていないこと。また、「疲れやすい」「調子の波がある」といった病気や障害の特性がなかなか理解してもらえず、職場内で孤独感や不安に陥りやすいといったことが離職の大きな原因として考えられます。

 平成205月、障害者権利条約が発効し、わが国でも批准に向けての検討が進められています。この条約の中核をなすのが「合理的配慮」という考え方です。これは障害のある人が就労を含めた社会参加を図るための必要かつ適当な変更や調整を社会の側がおこなわなければならないとするものです。(同条約第2条)そして、これを怠ることは障害に起因する差別であるとしています。

 将来的には、「障害者差別禁止法」や「障害者総合福祉法」といった法制度の整備が強く望まれますが、少なくとも現行の「雇用割当制度」の中においても、精神障害や発達障害など、すべての障害者を雇用義務の対象とし、ひとりひとり異なる病気や障がいの特性に「合理的配慮」した雇用環境をつくりだしていくことが課題であると考えます。

3.「障害者自立支援法」に基づく就労系事業で明確になった問題点

 「らいむ」の支援を受けて、新規に一般就労した140名のうち、45名(32.1%)は授産施設などの福祉的就労から一般就労に移行した人です。特に昨年、平成19年度においては、22名が福祉的就労から一般就労に移行しています。この背景には、平成18年に「障害者自立支援法」(以下、自立支援法)が施行され、就労支援がその大きな柱として掲げられたことがあります。

 法の施行以前の授産施設から一般就労への移行率が、わずか12%で、本来は「企業で働く力」を持った障害のある人までも、ずっと施設の中に「囲い込んでいた」という状態が改善されてきていることについては、もちろん一定の評価ができます。

 しかし、法の準備段階から、福祉行政と雇用行政との連携がしっかりと図られていなかったことが災いして、福祉施設から障害者を企業に押し出すことのみが強調され、企業による障害者雇用を前進させる仕組みが十分に制度化されていないことが実態として挙げられます。

 自立支援法では、働くことができる場合には訓練を、それが困難な場合には介護をという二者択一の事業体系となっています。前者の場合には、障害のある人が一般就労に向け、生涯に渡って訓練に追い立てられることになり、後者の場合には、「介護の対象なので働かなくてもよい」といったように、障害の重い人などが「働くこと」を通じて、主体的・能動的に社会参加することの意味が薄められていまっています。「訓練か介護か」「雇用か福祉か」という二分的な枠組みではなく、障害者一人ひとりのニーズや障害状況に応じて、働くことへの支援と福祉的な支援の双方が適切に提供される対角線的な仕組みづくりが必要です。

 自立支援法の施行により、応益負担が導入されたことで、障害者やその家族に過度な負担を強いるようになったことは周知の通りです。応益負担と併せて、報酬が日額払いとなったことで、私たち事業者も大幅な減収の危機にさらされ、不安な日々を過ごしています。

 本年1020日のNHKの番組「福祉ネットワーク」(シリーズ障害者の就労① “就労移行支援事業”は今)で、社会福祉法人ウィズ町田が経営する就労移行支援事業所「チャレンジドワーク・ウィズ 美空」(以下、「美空」)が紹介されました。「美空」は平成1811月に、就労継続支援A型事業所「スワンカフェ&ベーカリー町田店」(以下、「スワン」)との多機能型事業所として開設しました。

 「美空」では「らいむ」との連携のもとに、これまでに10名の障害者を一般就労に移行させてきました。障害者が自分の夢を実現し、一般就労することは私たち支援者にとっても、大変嬉しいことです。

 ところが、就労移行支援事業の目的を果たせた喜びに浸っている間もなく、厳しい現実を突きつけられました。利用者が就職した時点で、それまで、その利用者に対して支払われていた報酬が1円も入ってこなくなってしまいました。複数の利用者が続けて就職した翌月には、収入が半減してしまうこともありました。報酬の日額払いによる影響です。また、就労系事業では、一定数以上の一般就労を実現した場合、事業所に対して翌年の報酬が加算されます。しかし、応益負担の制度の中では、この加算は一般就労できずに、とり残された利用者や新規の利用者が負担する仕組みになっています。

 就労継続支援A型で実施している「スワン」は、地域最低賃金を支給しています。減額特例(旧・最賃適用除外)の申請をおこなう手段もありますが、障害者間の作業能力を比較することで、新たな差別を生みだす恐れがあると考えて、「スワン」では、一切申請をおこなわず、すべての利用者に最低賃金を支給しています。

報酬単価は全国一律であるにもかかわらず、最低賃金は都道府県ごとに定められ、東京の最低賃金額は全国で一番高い金額となっています。今後、段階的に最低賃金が引き上げられていく中で、どこまで自助努力でがんばりきれるかという強い不安があります。

 また、「スワン」の利用者は、雇用契約と利用契約の2つの契約を交わしています。雇用の場であるにもかかわらず、利用料を負担しなければならないという矛盾に対する声が利用者から多数あがっています。

 重ねて、障害のある人たちの就労支援と雇用の促進をはかっていくためには、福祉行政と雇用行政がしっかりと連携をはかり、制度間の矛盾を解消した新たな(対角線的な)仕組みをつくっていくことが重要です。

4.厚生労働省「障害者の雇用状況について」の報告を読んでの所感

「平成2061日現在の障害者の雇用状況について」の報告が、先月、厚生労働省より発表されました。この報告は、法により1人以上の身体障害者または知的障害者を雇用することを義務づけている事業主等から、毎年61日現在における身体障害者、知的障害者及び精神障害者の雇用状況についての報告を求め、集計結果をとりまとめたものです。

表題には、『公的機関、民間企業の障害者雇用は着実に進展』と大きく謳われてはいますが、果たして実際の状況はいかがなものでしょうか? 

最後にこの報告に関連して、参考人の意見を述べます。

1に、公的機関における法定雇用率の達成状況において、都道府県教育委員会のうち法定雇用率を達成している機関が、47機関中わずか4機関(昨年度までは、京都府、大阪府の2機関。今年度に奈良県、和歌山県が達成)に過ぎないということです。本来、公的機関は民間に率先垂範して法定雇用率を達成する立場にあることに加え、障害者の理解や差別の防止のために教育や啓蒙・啓発を担うべき役割のある機関において、このように長年に渡り、未達成の状況が続いていることはけっして見過すことはできません。教育委員会の職員で大きな割合を占める教員において障害者雇用を積極的に図っていくこと、そのために必要な環境整備を十分におこなうことが必要であると考えます。

2は、民間企業の法定雇用率の達成状況に関することです。全体の実雇用率は、対前年比で0.04ポイント上昇して、1.59%となりました。

しかし、一番の問題は、昭和51年に義務雇用制度が開始されて以来、30年以上、一度として、法定雇用率を達成したことがないという事実にあります。

わが国の民間企業における現在の法定雇用率は、1.8%であり、これは同じ「雇用割当制度」をおこなっているフランス(6%)やドイツ(5%)の数字と比べてはるかに低く、お隣の韓国(2%)にも及びません。

平成2061日現在の1.59%という数字は、法定雇用率の対象となる73,042の企業に勤める障害者数325,603人を法定雇用障害者数の算定基礎となる労働者数20,499,012人で割ったものですが、この障害者数は、実際に企業で雇用されている障害者数とは違っています。重度の身体と重度の知的障害者については、法律上、1人を2人に相当するものとして、「ダブルカウント」がなされています。

 もし、「ダブルカウント」をしなければ、実際の雇用率は、1.1%台に落ちてしまいます。昭和52年の実雇用率が1.09%ですから、障害者の雇用が「着実に進展している」とはとてもいえません。

「らいむ」の登録者も3名がお世話になっている、ユニクロのように、「1店舗に必ず1名の障害のある人を雇用する」「障害のある人を雇用することで、店舗全体のお客様サービスの質が向上する」という高い企業理念を掲げ、積極的に障害者雇用にとりくんでいる企業がある一方で、法定雇用率を達成している企業の割合(44.9%)は、未だ過半数にも達していません。「障害者を雇用するよりも納付金を支払った方が安上がり」と考えている企業が、たくさんあるのです。

実雇用率の低い事業主については、雇用率達成指導がおこなわれていますが、特別指導を経て、企業名の公表にまで至った例は、過去の累計でわずか13社に過ぎません。

また、報告では、企業規模別に見て、中小企業の実雇用率の低さ、特に100299人規模の企業における実雇用率(1.33%)がもっとも低いことを指摘しています。今回の改正法案でも、納付金制度の適用対象をこの規模まで拡大することが挙がっています。

しかし、資本力のある大企業が特例子会社制度などを活用して、障害者雇用を進めているのと同様の手法をとることは、資本力の弱い中小企業にとって、ましてやこの不況下では、きわめて困難です。

一方で、企業が雇用している障害者の割合を障害別に見ると、より就労に困難を抱えている精神障害者については、1000人規模の企業(1.65%)以上に、100299人規模の企業(2.03%)が積極的に雇用しているという実態もあります。

今後の「障害者雇用促進法」の改正にあたっては、精神障害者はもとより、発達障害者など法の外におかれているすべての障害者を雇用義務の対象とし、法定雇用率を早急に引き上げること。中小企業が積極的に障害者雇用にとりくめるよう助成金等の制度をより下に厚くすることと併せて、制度の利用が図られるよう周知していくこと。納付金の金額については、「納付金を支払った方が安上がり」といった間違った論理がまかり通ることのないよう、特に大企業においては、地域最低賃金とリンクさせること。障害に起因するあらゆる差別をなくし、「義務だから雇用するのではなく、雇用しないことは恥ずべきこと」といったノーマラーゼーションの考え方をすべての公的機関、民間企業が共有し、実行する土壌づくりを期待します。

また、障害者の就労・生活を「面で支える」ためのネットワークづくりとして、また、福祉行政と雇用行政の連携を強化していくうえでも、雇用促進法に基づく「障害者就業・生活支援センター」については、障害福祉圏域(約400ヶ所)を単位とするのではなく、ハローワーク管内に1ヶ所の整備(2007年度末のハローワークの数は全国で576ヶ所)を図ることがより有効ではないかと考えます。

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衆議院厚生労働委員会で意見陳述せよとの依頼が舞い込んできて

 12月3日の、町田市障がい者就労・生活支援推進協議会の冒頭で、件(くだん)の就労・生活支援事業の公募について、障がい福祉課長より説明を受けた。内容は以下の通り。

 ①09年度の就労・生活支援事業の受託者については、プロポーザル方式による公募でおこなう予定。(委託事業については、公平性のうえからも一定期間で見直すことが事業のあり方としてふさわしいという理由から)

 ②町田市の方針決定として、2ヶ所目の支援センターを立ち上げる方向で進めている。2ヶ所目のあり方や、1ヶ所目との役割分担については、今後、中身を検討していく。

 ③障がい福祉事業計画でも就労支援は重点目標に挙がっている。また、中期経営計画にも重点事項として、掲載されている。就労支援に関する施策を推進していくために、障がい福祉課内に『就労支援推進プロジェクト』を立ち上げた。このプロジェクトのメンバーは、副参事をプロジェクトリーダーに、ケースワーカー、精神障がい者担当、事業担当の4名(?)で構成。

 ④本日の協議会では、世田谷区の先駆的事例を学習し、今後の町田市における就労支援のあり方の検討に活かしていきたい。

 この後は、「世田谷区における就労生活支援事業について」というテーマで、世田谷区障害者就労支援センターすきっぷ 施設長の上滝氏、特定非営利活動法人障害者支援情報センター 理事長の進藤氏のお話を聞かせていただいた。

 講演の内容は省略するが、一番感じた事は、世田谷区の積極的な姿勢。知的と精神、就労支援と生活支援と重層的なネットワークが構築されている。そのネットワークに商工会議所や青年会議所など、企業関係者が高い意識を持って関与している。10年の歴史を経て、成熟したネットワークは、全国の就労支援のモデルとなっている。

 一方で、いくつかの課題もある。自立支援法が施行され、3障害が一元化されたことで、それまで、知的、精神の「看板」を背負っていたセンターが、それぞれ「看板」を下ろした。基本的には利用者自身が希望する機関が支援するということになっているが、「定着支援」では、時に「譲り合い」が生じることもあるという。

 また、知的、精神以外の人は、国制度の就業・生活支援センターが対応する位置付けになっているとはいうが、広域対象の就業・生活支援センターで、他区との折り合いはついているのだろうかという疑問。

 知的障害者の福祉施設利用が、「利用調整会議」という枠組みの中で、区の総合福祉センターで「一元化」されており、たとえば、離職したときに、いつでも、すぐに希望の福祉施設を(再)利用できる状況にないことなど。

 2つ目のセンターを設置する町田市としては、世田谷区の事例の良い面、悪い面(もちろん、先駆的事例ということでは優れた面が圧倒的に多いのだが)両方から、しっかりと学び、中身の検討を深めてほしい。

 本日、午後に障がい福祉課から入電。来週中に協議の時間を設けてほしいとの依頼。可能な日程を伝えた後、「協議の相手と協議の内容について」質問したところ。副参事他数名と『引継ぎ』の件について協議したいとのこと。

 先週末に開催したウィズ町田の理事会では、この間の一連の報告をおこなった後、次年度の事業委託に対する方針について協議した。そこで出た結論は、公募の内容が公表されていない現段階では、判断の仕様がないため、公募の記事が出た後に開催されるであろう説明会にも参加した後、中身を十分に吟味してから、方針を決定しようというもの。

 そのような状況の中で、いきなり、『引継ぎ』の話が出されたことに対して、さて、何とコメントすれば良いものか!? 

 

 話は変わって、来週12月9日に開催される「衆議院厚生労働委員会」に参考人として意見陳述をせよとの、なんだか途方もない話が突然、舞い込んできた。前国会から継続審議となっている「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出 第169回国会閣法第69号)」について、意見陳述した後に、委員会の先生方の質疑に答えよというもの。

 おかげで今週末は、資料づくりに四苦八苦することになりそう。自分如きが、障害者雇用や就労支援の根幹とも言える「雇用促進法」の改正という大問題に口をはさんでもいいのかという恐れもあるが、とにかく、がんばるしかあるまい。早速、ILOの第159号条約の資料などを紐解いてはいるが、この訳文がなんとも、また難解で…。

(天野)

 

 

 

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