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2008年10月

秋の夜長、たまには読書を楽しんでみてはいかがでしょうか?

 明日は早朝からの職場内支援が控えているので、今日は少し楽をさせていただき、次号のウィズ町田の法人広報紙に掲載予定の原稿をアップさせていただきます。

 「理事長の本棚」なんてコーナーにしたおかげで、毎月、何冊も本を読まなければならない状況を自分でつくってしまったことをちょっぴり後悔したりもしています。

 読書の時間は、専ら、登録者の方の職場支援に向かう途中の公共交通機関の中と、就寝前の布団の中となっています。最近では、布団の中の方は、本を開くと同時に、目の方が閉じてしまうという「条件反射」が強まり、困っています。

 電車の中は、以前は活字に目をやる人がもっとたくさん居たと思うのですが、今は携帯でメールやゲームを楽しんでいる人が大半を占めているようです。携帯メールはまったく使えない自分としては、どうして親指ひとつで、あれだけタッタカタッタカとメールが打てるのかが、不思議でたまりませんが…。

 読書の秋です。たまにはじっくりと活字と向かい合ってみることも良いのではないでしょうか?

(以下、広報紙の原稿です)

 

「(人は)何のために働くのか?」

誰もが少なからず一度や二度は自問してみたことのある問いだろう。(もしも、現在の仕事に行き詰まりを感じている人なら、毎日、何回も自問自答しては、ため息をついているかもしれない)

 考えはじめてはみたものの、結局は、「生きるためには働かねばならない」という安易な答えに行き着くこともしばしばだ。

「働くのは金のためであり、しょせんはそれに尽きる」と吐き捨てて、問いかけそのものを否定してしまう人もいる。

 大庭健(おおば・たけし)氏の著書、『いま、働くということ』(ちくま新書)は、そのような『シニシズム』(ものごとに正面から立ち向かおうとするのを冷笑する考え方)が蔓延する社会に警鐘を鳴らし、いま一度、働く意味(それは生きる意味でもある)について真剣に考えてみることの大切さを提唱している。

 正直、ざっと通読したくらいでは、まったく歯が立たない難しい本だが、就労支援が大きく謳われている現在の障がい者福祉に関わる職員の皆さんには是非、時間をかけて読んでいただきたい本だ。

 まずは、社会の常識を識り、また、働く意味を考えていく前提として、日雇い派遣をはじめとする非正規就業の問題や、介護・福祉などの「福祉労働」の低賃金の問題など、今日の劣悪な状況に至るまでに、いかにして働く環境が破壊されてきたかについて触れている第Ⅰ章(この章と結びは比較的、平易で具体的)をしっかりと読み、頭に刻むことからはじめてほしい。

 「(人が)働くということは、『間柄をなして・自然に対して』働きかけていく協業に参与することである」

 「働くということは、すなわち新たな生命が育っていくのを見守り、支えていくことであった(いのちの再生産)」

 「『プロジェクトとしての生』という人生観のもとでは、 (…中略…) 快や満足の妨げになるような特性・資質はおしなべて“ハンディキャップ”という負の価値しか認められなくなる」

 「(働く喜びとは)『間柄をなして・自然に対して』働きかけていく協業において、自らの役割を遂行し、自分の社会的存在が承認される喜びでもあった」

 第Ⅱ章からは、かなり難解になるが、途中で投げ出したり、あきらめたりしないで、がんばって読み通してほしい。

 日々の自分の仕事や、普段、関わっている利用者の人たちの姿を思い浮かべ、引きつけながら読むことで、きっと理解の糸口がつかめるだろう。

 財団法人ヤマト福祉財団の『障がい者クロネコメール便配達事業』のパンフレットの表紙の写真はスワン町田店のSくんだ。

 らいむに登録したときは、家から外に出るのもやっとという状況だった。それが今では、どんな雨の日も風の日も、自転車に乗って、メール便の配達に出かけていく。

その姿はとても凛々しく、誇らしげだ。

 パンフレットには、こんなコピーが記されている。

 『私を、待っていてくれる人がいます。』

 

 そこに「待っていてくれる人」がいるということは、自分の社会的存在を認めてくれる人がいるということだ。他者の期待に対して応えることができたという喜び。

 「お役に立てている」「やっと一人前になれた」という安堵感が、更に前に向かおうとする気持ちの足場となる。

 メール便を配達しているSくんと街角ですれちがった。その姿がすっかり街に溶け込んでいることがとても嬉しかった。

 『街で、障がい者が働いている。

  そんな風景を、あたりまえにしたい。』

(パンフレットのもうひとつのコピー)

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「反対側」から見た就労支援

 今日は、らいむと関係の深いある企業からの依頼を受けて、K市で開催された障害者合同面接会に、企業側の面接官として参加させていただくという普段は得がたい体験をしてきた。

 いつもは、もちろん、求職者であるらいむの登録者に同行するかたちで、合同面接会に参加するわけだが、攻守ところを変えて体験した合同面接会では、普段の自分たちの支援のあり方を見つめなおす意味でも、新たな発見があり、また、多くのことを学ぶことができた。

 まずは、「反対側の席」から求職者の人たちの本当に「就職したい」という強い意思が予想以上に伝わってきたことが印象的だった。

 面接会の始まる30分以上も前から、ブースの前の席に座って、番号札がかけられるのをじっと待っていた人。私が面接をおこなった企業だけに絞って、最後までずっと順番を待っていてくれた人。

 決して、上手な文字ではないけれど、おそらく何時間もかけて、やっと書き上げたであろう履歴書を自分の一番大切な宝物を贈るように手渡してくれた人。

 正直に、前職の退職理由を話してくれた人。緊張して、本当はもっともっと伝えたいであろう自分の気持ちを伝えることができずに、固まってしまう人。家や支援機関での模擬面接で、必死で覚えたであろう自己アピールの言葉を繰り返す人。

 面接をおこなう企業側の大変さもよくわかった。知的障がいの人を対象にした求人が少なかったこともあって、最終的には12人の面接をおこなうことになった。13時から16時までの所定の時間を30分延長して、最短でもひとり15分の面接をおこなった。休みなく、これだけの面接をおこなうのには、ものすごく気力と体力のいることがわかった。

 障がいのある人に同行する支援機関や施設や保護者の人の、面接への「介入度」や「在り方」も勉強になった。必要なことを聞きたいときに、傍にいない支援機関や施設。面接の質問内容をひとつも聞き漏らすまいと、メモを取る支援機関の人。(らいむの職員もいつも同じ事をしている) 本人以上に、話し出してしまう保護者。おそらく支援機関があるという情報すら知らないまま、ひとりで参加している障がいのある人。

 できる限り、緊張を解き、普段の本人のありのままの姿から、本人の良さを感じ取り、時には、「うちよりも、もっとあなたに合った仕事があるはず」「他の企業の面接も受けて、比較検討してみたら」とアドバイスを送り、就労に向けての本人のモチベーションを絶対に下げることのないように対応することへの配慮で、面接が終了する頃には、ヘトヘトに疲れ果てていた。

 面接会が終わってから、企業の事務所に戻り、つい先ほどまで、採否についての検討会議をおこなった。法定雇用の義務対象外の企業ではあるが、すでに5名もの障がいのある方を雇用してくださっている企業なので、可能性のある人については、意見がほぼ一致した。残念ながら、採用が難しい人については、おざなりの文書ではなく、きちんと採用に至らなかった理由や、就労に向けて、今後、身につけてほしいと思う課題を明示した文書を送りたいと思う。

 最終的に、採用予定者として、3名の人を選んだ。何度も繰り返すが、法定雇用の義務対象外の(大変、失礼ではあるが)小さな企業が、すでに雇用している人も含めると、8名もの障がいのある人を雇用したいという姿勢を示してくださっている。(雇用率で言えば、なんと44%という数字になる)支援機関の役割としては、できる限りの制度活用と、現実的な支援をおこなっていかねばならないことは言うまでもないことだ。

 わざわざ他市にまで出かけていって、こんなお節介な「就労支援」をおこなっている支援機関ということで、また批判を浴びてしまうかもしれない。

 でも、「就労したい」という切なる願いを持っている障がいのある人は、町田市民に限らない。ひとりでも多くのそんな人たちの願いをかなえていくことが、就労支援機関の役割だと強く思う。

(天野)

 

 

 

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私を、待っていてくれる人がいます。

 Sa君は21歳。アスペルガー症候群の障がいを持っている。

 養護学校高等部を卒業してから、市内のK授産施設に通所したが、本人が信頼していた職員が体調を崩され、入院してしまったことが原因で休みがちになり、最終的にはまったく通所できない状態となり、約1年で退所となってしまった。

 在学中にも一度、「一般就労したい」という本人、家族側の希望と学校の方針とが合わないということで、相談を受けていたが、調整がつかないままに卒業し、授産施設への通所が決まった。

 施設を退所した後は、まったく外に出られない状況がしばらく続いていたが、昨年の夏から、改めて、らいむに相談に訪れるようになったが、その当時は、強迫観念が強く、夜になると、あれこれ考え込んでしまい、眠れないままに朝を迎えるという悪循環から、完全に昼夜逆転の生活になってしまっており、らいむの面談の時間に遅れたり、無断でキャンセルしてしまうこともしばしばあった。

 昨年秋の「委託訓練」に参加した頃から、徐々にではあるが、生活が安定し、本人の心の中にも「このままではいけない」という気持ちが芽生えてきた。

 本人が、刺激を受けたのは、やはり自分と同じように障がいを持ちながらも、一生懸命働いている人たちの姿であった。とりわけ、興味・関心を持ったのが「メール便配達」の仕事であった。

 実際に「メール便配達」の仕事も体験してみて、「これなら自分もやれそうだ」という実感を掴んだのだろう。この春から、スワンの事業の一環としておこなっている「メール便配達」の事業を一部拡張するのに合わせて、毎週金曜日に、「メール便配達」の仕事に責任ある形で関わってみようという意欲を示してくれ、今年の5月末から、毎週金曜日に、天野がJC(ジョブコーチ)として、関わることになり、以来、毎週金曜日の午前中は、時間の許す限り、最優先でSa君のサポートに当たっている。

 訓練初回は、緊張した面持ちで約束の時間前にやってきたSa君だったが、2回目は無断欠勤、3回目は大幅遅刻ということで、とうとう天野の「雷」を受けることになってしまった。

 以後、「悔い改めた」のか、明け方まで眠れなかった日でも、眠い目をこすりながら、約束の時間には必ず出勤してくるようになった。

 元々、記憶力や空間把握力(地図を読む力)には高い能力を持っているSa君。みるみる力を伸ばし、現在では、80通を超えるメール便を、地図も持たずに2時間弱の時間で配り終えることができるようになった。

 今日の午前中もSa君のサポートに入った。サポートとは言え、天野の仕事は、順路の組み立てと配達完了記録の入力のみで、配達は2回に分けて、Sa君ひとりでおこなっている。(今後は、組み立てや入力もSa君が単独でおこなえるように支援していく予定)

 天野が別のルート(将来的にはこれもSa君に担ってもらうつもり)の配達に出かけたところで、1回目の配達を終えて、戻ってくるSa君と出くわした。

 昨晩は良く眠ることができなかったということで、朝は沈んだ表情をしていたSa君だったが、無事、配達を終えた安堵感からか、配達用のバッグを振り回しながら、ご機嫌の様子で、すれ違い、挨拶を交わした。

 天野が配達を終えて、戻る途中で、Sa君の先輩にあたるSu君とK君が自転車で配達をしている姿を見つけ、「がんばれよ!」と声をかけた。

 ヤマト福祉財団の「メール便配達事業」の啓発パンフレットの表紙にもなっているSu君も、最初にらいむに来た頃(もうかれこれ3年半前)は、Sa君よりもひどい状態で、らいむでの面談も、ままならず、屋外に散歩に出て、時間を潰すことが精一杯の状況だった。(それが今では、メール便担当の職員も一番の信頼をおくほどの働きぶりだ)

 Su君やK君がメール便を配達している姿が、当たり前に街に溶け込んでいることがとても嬉しく思えた。

 Su君が表紙のパンフレットには、こんな「コピー」が掲載されている。

 『私を、待っていてくれる人がいます』

 『街で、障がい者が働いている。そんな風景をあたりまえにしたい。』と、

 

 企業で働くこと(一般就労)だけが、我々の支援の目的ではない。

 その人にあった、その人なりの働き方を見つける手伝いをしていきたい。

 自分にあった働き方を見つけるまでに、少しの時間で済む人もいれば、1年、2年…、いやそれ以上の歳月がかかる人もいる。

 らいむの支援は、兎角、個別支援に陥りがちで、コーディネート機能がまったくはたらいていないという批判をこれまで散々受けてきているが、就労支援の基本はあくまでも、その人に合った個別支援をおこなうことだと信じている。そして、個別支援をおこなう(受ける)前提として、お互いの信頼関係が欠かせない。

人間にとって、「働くこと」の喜びは、自分自身が社会にとってかけがえのない存在になることだと思う。

 だから、「私を、待っていてくれる人がいます。」というコピーは最高だ!

 Sa君が、いつか同じ障がいをもつ先輩のSu君のようになること。そして、Su君が更に新しいステージに飛躍することを、今のらいむの職員全員が願っている。

(天野)

 

 

 

 

 

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新たなスタートライン 「委託訓練」を終えて

 8月から初旬から2ヶ月間に渡って実施した「社会福祉法人ウィズ町田」の「委託訓練」が昨日、終了した。

 「委託訓練」の正式名称は、「障害者の態様に応じた多様な委託訓練」。

 障がいのある人の職業訓練の機会を大幅に拡大して、その雇用・就業を支援するために、国制度として平成16年度から全国で実施されている。

 東京の場合は、財団法人東京しごと財団 心身障害者職能開発センターがコーディネート機関となり、企業や社会福祉法人、NPO法人、民間教育機関等に委託して、「知識・技能習得訓練コース」「実践能力習得訓練コース」「e-ラーニングコース」の3つのコースを開設し、様々な職業訓練をおこなっている。

 ウィズ町田の「委託訓練」では、「知識・技能習得訓練コース」の一つとして、訓練生を公募し、基本的ビジネスマナーや履歴書の書き方、面接の受け方、ハローワークの利用の仕方など、就職活動に必要な知識やスキルの習得、法人内の各事業所においての清掃やパンづくり、接客等のOJT、障がい者雇用企業の見学、合同面接会の見学、就労中の障がい当事者の方の体験談を聞くなど、盛りだくさんの内容で実施した。

 昨日の修了式で、東京しごと財団の職員の方から、「修了証書」を受け取ったのは、3名の障がいのある人たちは、全員が1日も休むことなく、100%の出席率で、2ヶ月間の職業訓練をやり遂げた。

 最初の頃は、とにかく不安で不安で、訓練を終えて家に帰ってから、毎日のように、らいむに電話をかけてきた人。相手の顔をしっかりと見て、あいさつをすることが苦手で、うつむいたまま蚊の鳴くような声で、あいさつをしていた人。体力に自信がなく、すぐにへばってしまった人など、果たして、ひとりもリタイアすることなく、最後まで参加することができるかどうか心配していたが、それもすべて杞憂に終わった。

 訓練をやり遂げた達成感で、誇らしげに表情を輝かせ、「修了証書」を受け取った3人が、訓練の中で一番刺激を受けたのは、やはり同じ障がいのある人たちの働く姿や体験談であったようだ。快く、職場見学を引き受けてくださった「株式会社キユーピーあい」さん、貴重な体験談を聞かせていただいたらいむOBのTさん、Miさん、Muさんには、特に感謝の気持ちを述べさせていただきたい。

 「修了証書」をくださった東京しごと財団の方がお帰りになる際、誰に指示されるまでもなく、さっと自分の席を立って、玄関口まで走り、整列して、「ありがとうございます」と深々と頭を下げた3人の姿を見て、成長を実感した。

 「委託訓練」は修了したが、それぞれの就職活動は、これから先がいよいよ本番を迎えることになる。

 訓練で学んだこと、身に付けたこと、そして見えてきた自分の課題をしっかりと見つめ、夢の実現に向けて、がんばっていってほしいと願う。もちろん、我々もそんな彼らを全力でサポートしていきたい。

(天野)

 

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